ChimPom

Profile

Chim↑Pom

Artist collective formed in 2005 in Tokyo with Ushiro Ryuta, Hayashi Yasutaka, Ellie, Okada Masataka,
Inaoka Motomu and Mizuno Toshinori and all in their twenties at the time. Responding instinctively to the “real” of their times, Chim↑Pom has continuously released works that fully intervene in contemporary
society with strong social messages. Using video as a primary discipline, their expressions freely cross over
a range of media from installation to performance. While based in Tokyo, they develop their activities
globally in exhibitions and projects in various countries. More recently,they have expanded their activities
further to include the direction of art magazines, and exhibition curation. Japanese-language publications
Naze Hiroshima No Sora Wo PIKA! To Saseteha Ikenainoka [Why Can’t We Make the Sky of Hiroshima “PIKA!”?](Tokyo: MUJIN-TO Production, 2009, co-edited with Abe Kenichi), Chim↑Pom (Tokyo: Kawade Shobo Shinsha, 2010),  Geijutsu Jikkohan [Art as Action] (Tokyo: Asahi Press, 2012),and  [SUPER RAT] (Tokyo: Parco, 2012) are now available.

卯城竜太・林靖高・エリイ・岡田将孝・稲岡求・水野俊紀の当時20代の6名が、2005年に東京で結成したアーティ
スト集団。時代のリアルに反射神経で反応し、現代社会に全力で介入した強い社会的メッセージを持つ作品を次々
と発表。映像作品を中心に、インスタレーション、パフォーマンス など、メディアを自在に横断しながら表現して
いる。東京をベースに活動しながら、世界中の展覧会に参加、海外でもさまざまなプロジェクトを展開。近年はさ
らに活動の範囲を広げ、美術専門誌監修や展覧会キュレーションなども行う。著作に『 Chim↑Pom チンポム作
品集』(河出書房新社、2010年)、『なぜ広島の空をピカッとさせてはいけないのか』(阿部謙一との共編著、無人島
プロダクション、2009年)、『芸術実行犯』(朝日出版社、2012年)、『SUPER RAT』(パルコ出版社、2012年)がある。

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「原子爆弾」と「ピカドン」は、いずれも同じものを指す言葉ながら、天国と地獄ほどの隔たりがある。「原子爆弾」は政治家や知識人たちの言葉だ。人体実験のように科学的なこの言葉は、一方には勝利の象徴、他方には敗北の烙印だった。一方、「ピカドン」は庶民の言葉だ。あの瞬間の「何事か」を感覚のまま光と音で表したこの言葉には、痛みや恐怖、死、衝撃、生き延びようとする身体などの体験が生々しく凝縮されている。だから、「原子爆弾」は翻訳できても、「ピカドン」は翻訳できない。なぜならそれは言葉にならない歴史を背負っているからだ。

広島の空に飛行機雲で「ピカッ」と描く。時間が止まったかのような原爆ドームの上空で、「ピカッ」という文字がまるで平和そのものの青空に吸い込まれて消える。擬態されたフラッシュバック、このヴァーチャルな1コマの世界で、何がリアルに見えるだろうか。僕らはメッセージではなく「刺激」を残したい。芸術は「答え」にはなり得ないが、時代を超えて世界を「刺激」できる。このたった五分ほどのんびりとした映像が残すインパクトは、絶大で、重要だ。

日本は平和だ。喜びも悲しみも、芸術も政治も、貧困や殺人さえ、すべて「平和」のなかだ。「平和」の実感は被曝者の死とともに失われ、僕たちはこの正体不明の「平和」にこれからも依存する。だけど、人類は自らが刻み込んだトラウマに向き合いつづけなければならない。さもなければ「平和」の尊さに気付くことも、それを守ることもできない。



2008年、Chim↑Pomは広島市現代美術館ミュージアムスタジオでの個展のため二つの作品《リアル千羽鶴》と《ヒロシマの空をピカッとさせる》の制作を行なっていた。《リアル千羽鶴》は、リアル造形の技術を使い、実物大丹頂鶴の千羽鶴を作るというプラン、《ヒロシマの空をピカッとさせる》は原爆ドームの上空に、空をバックに大スケールの文字を書くスカイライティングという手法で「ピカッ」という文字を描くというプランだった。

10月21日午前中、広島市内の上空で5回「ピカッ」とスカイライティングを行ない、そのうちの最良のショットを作品に使用する予定であった。ところが、現場を目撃した市民からの通報と読者提供の写真をもとに、翌22日付の『中国新聞』が「不快」だったという市民の声や被爆者団体代表の苦言とともに、Chim↑Pomの行動を強く批判する記事を掲載した。このことはすぐに多くのメディアでも報じられ、インターネット上でもバッシングが起こり、卯城が被爆者団体代表を前に「事前告知の不足」について謝罪会見を行なうまでの社会的騒動となった。予定されていた広島市現代美術館での個展も「自粛」というかたちで中止となり、Chim↑Pomは、作品を発表するという、真意を伝える唯一の機会をいったんは失った。

その後被爆者団体と個人的に交流を始めたChim↑Pomは、一連の騒動を検証した本『なぜ広島の空をピカッとさせてはいけないのか』の制作に着手、翌2009年3月に刊行した。また同時期に東京・原宿(VACAVT)にて個展「広島!」を開催し、作品の発表、坪井直氏(被爆者団体代表)のトークショウを行なった。この展覧会はこれまでに、東京・恵比寿での「広島!!」(NADDIF)、韓国・ソウルでの「広島!!!」(SOMA美術館)と巡回を続け、2011年末には原爆の図・丸木美術館での開催が決定している。(2011.8月現在)。事の顛末は『なぜ広島の空をピカッとさせてはいけないのか』(河出書房新書)に詳しい。